―――――――…
なにかにひかれるように緩く瞼を持ち上げると、体の隅々まで日の光が降り注いでいた。
――あたたかいな。ひだまりにいるみたい。なんだかとても、懐かしい匂い。なのにどうしてわたし今…泣きそうなんだろう。
薄く開けた視界が滲み、その向こうに覗いた人影も震えた。
――…だめ、行かないで──
反射的にそう思って手を伸ばした。
その指先にふわりと、柔かな感触。
そこで漸くうららは、目を覚ました。
『お、おはよう、うらら』
伸ばした手の先に居たのは、いつの間にかすぐ傍にきていたライオンだった。
今度は日の光を纏って輝いている。
やっぱり、綺麗だ。
『……嫌な夢でも、見たの…?』
言って、ペロリとライオンがその大きな舌でうららの頬をひと舐めした。
うららはそのままライオンの黄色い毛並みの胸元に顔を押し当てる。
言葉は出てこなくて、代わりに溢れていたのは涙だった。
『…だいじょうぶだよ、うらら…夢は必ずさめるし、こわいのは、夢の中だけさ』
ライオンの言葉に、うららはふるふると顔を押し付けたまま首を振った。
柔らかな毛に涙が染み込んでいく。
その感触を知っている気がして、だけど思い出せなくて。
余計に涙が溢れる。
――こわい。
夢の内容を覚えていなかった。
どうしても思い出せない。
胸に残るのは得体のしれない恐怖と不安。
こわいのは夢の中じゃない。
夢から醒めるその瞬間がこわいと。
そう思った。