『ボクは少しくらい寝なくても大丈夫だし、周りの気配には敏感だ。だからみんなは眠った方がいい』
ライオンの言葉に甘えて、今夜は見張りは立てずみんなで揃って休むことになった。
一日中歩き通しでみんな疲れていた為、有難い申し出だった。
『でも、火は消した方がいい。火は時に悪いものまで、呼んでしまうから…』
ライオンが神妙な声でそう言ったので、寝る前に火は消すことになった。
アオ先輩の合図で焚き火は消え、とたんに辺りは暗闇に包まれる。
だけど不思議と怖くはなかった。
なるべく草の多い場所にそれぞれ横になる。
思ったよりも地面は柔らかかったし、横になると急激な眠気に襲われた。
外で寝るということにあまり抵抗が無かったことには自分でも驚いたけど、とにかく体が休息を求めていたのかもしれない。
青草の匂い、湖の水の匂い、風と呼吸だけの音、降り注ぐ月の光。
それらが体にゆっくりと染み込んでくる。
思えば旅を始めてから、はじめての野宿だ。
慣れてきたせいだろうか。
この世界への抵抗感や違和感は、少しずつ感じなくなっているように思えた。