「……レオ、先輩…だれが…なにが、いるんですか…?」


明らかに今までとは違う雰囲気を感じ取ったように、うららは顔を曇らせる。

若干この展開が予測できただけにわずかに罪悪感を感じつつも、レオは未だ暗闇に身を潜めるその存在に視線を向けた。

怯えてレオのシャツを掴むうららの手を取る。
逃がさないように。

だけどいつまでも弱虫ライオンのぐだぐだに付き合ってやれるほど、生憎ヒマじゃない。

お腹は減っていたし疲れてるし、さっさと寝てさっさと先に進みたい。
レオの今の最優先事項だ。

静かな森に落とした声はよく響く。


「…出て来いよ。お前ホントはオレじゃなくて、こいつに会いたかったんだろ?」

『………』


「リオもアオも、ここの住人はみんなうららに会う為に、オレらを呼ぶんだって言ってたぜ。お前も、そうなんだろ?」


カサリと、緑の匂いが風に混じり空へと運ばれる。
いつの間にか頭上には月が浮かんでいた。

静まり返った湖のほとりに、その息遣いはありありと存在感を主張する。
まだ躊躇している一歩。


――どんだけグズグズしてるんだこいつは。


「臆病だろうが弱虫だろうが、言いたいことは自分で言え!」


思わす叫んだレオの声にひかれるように、漸くゆっくりと草を踏む音がこちらに近づいてくる。
闇夜に光るその双眸も、大きなその影も。

それから月の光を身に纏い、鬣と尻尾をゆらりと揺らしながら、金色のライオンが目の前に姿を現した。