溢れていた光がゆっくりとひいた後、目の前には想像以上にボロボロと大粒の涙を零したうららがいた。

触れていた手が絡み合い、うららが勢いよくアオの腕の中に飛び込んできた。
それを受け止めてほっと息を吐く。


「アオせんぱい…! よ、よか…っ 急に、いなくなっちゃったから、し、心配し…! ごめんなさいわたしが、わたしが手を離したから…! もう絶対、ぜったいに離しませんから…! ぜったいに…!」


まるで小さい子供のように泣きながら、涙とそれ以外の液体でアオのシャツを濡らす。
しっかりと、離すまいとしがみつくうららに無意識に触れようとしたアオのその手には、いつの間にか何かが握られていた。


「…これは…」


ずっしりと重たく冷たい感触。
ブリキのきこりご所望の油のカン。

それに気付いたうららが顔を上げて「アオ先輩も、さがしもの見つかったんですね」と、笑った。

涙でぐちゃぐちゃの顔で笑うものだから、思わずアオまで笑ってしまった。
隠すように顔を背け、抱き留めた腕にきつく力を込めうららを自分の胸に押し付ける。
そうカンタンには見られたくなかった。

体と体の境界が限りなく無くなって、隙間が小さな温もりで埋まる。
うららにバレないようアオは、一滴だけのそれを払った。

それから体を起こし顔を上げ、いつものようにメガネのフレームを押し上げうららと向き合った。
うららは不思議そうにアオを見上げている。

それから来た時と同じようにうららの手をとる。
今度は決して離さぬよう、しっかりと。


「帰ろう。ソラが、待っている」

「…はい…っ」


そうしてアオたちは見計らったように現れた出口から、帰りは難なく地上へと戻った。

うららは戻ってすぐにメガネをかけ、ソラのもとへと真っ先に駆け寄り薬を飲ませた。
薬は良く利いたらしく、ソラの顔色も様子も次第に戻っていった。


それを見届けてから今度は、ブリキのきこりのもとへと足を向けた。