反射的に手を延ばし母親の手を掴もうとしたアオの幼く短い腕は、母親を捕まえることはできず虚しく空をかいた。

ただ母親が呑み込まれていく様を見送った。

涙も出なかった。


──信じきれないなら、どうして捨てないんだ。

現実を見つめて歩き出すことすら放棄して、そんな妄想めいた希望にすがって、どうして、嘘ばかり。詭弁ばかり。


遊ばれただけの哀れな自分も、顔さえ知らぬ父親も――自分のことも。


――なにひとつ本当に愛してなんか、いなかったくせに。