『あーあーあ~んあ~ん』
涼也が泣き始めた。
まだ新幹線に乗って30分しか経って無いのに。
しかも品川駅からは大勢のスーツを着た会社員の人達が乗って来ていて自由席は満員状態。
私は、やっぱり・・か…って、また渋い顔をする。
涼也の泣き方は普通の子供が泣くようには泣かない。
かすれたような声で泣く。
私は少しでも泣きやませようと、その場で抱っこしたり、くすぐったりと必死。
この状態であとまだ3時間も新幹線に乗っていないとイケない。
涼也は延々と泣く。
うるさいなぁ……と、言わんばかりの痛い視線を感じる。
涼也は見掛けは普通に見える。
だから端から見ると、ただウルサく泣いてる子供にしか見えない。
せっかく買った弁当も喉を通らない私。
…と、言うか涼也を私の膝上で抱っこしているから食べれない。
涼也が泣き続けて1時間半が経って、大阪に着いた。
そこで1人の、中年女性が私達の隣りに座って来た。
私達は3列シート側に腰を掛けていて、1シート空いていた。
涼也がウルサいからだろう……東京駅から大阪まで誰1人と私達の横には座らなかった。
そこへ、その人が座って来た。
私は、何か嫌な反応をされなければ良いのになぁ……って不安が一気に一杯になった。
『若いのに、お母さん大変ね。』
えっ?
私は突然の言葉にビクッとしながら答えた。
『はぁ。あのウルサくてすみません。』
その女性はニッコリ笑ってから
『良いのよ。子供なんだから泣くのも騒ぐのも当たり前やん。これで文句言って来る人はおらんよ。
もし言われたら、あんたの子供は泣かんのんかって言ってやりなさい』
って、周囲に、イヤ、私達が乗っている車両全体に聞こえるような大きな声で言ってくれた。