宮殿の正面口の段差には、王子と執事の二人だけが座っていた。

既に姐御達が出ていった正門をボゥー…と眺めている王子を、横から執事はチラチラと見てくる。



「何だ」



「……あー、あのよ。王子」


視線に気づかれていたらしく、執事は遠慮がちに言う。



「さっき言った
国王の命令の事なんだけどよ…
あれ…嘘なんだよな。本当は、敬語を
使うなって言われてただけなんだよ…」


此処に残る為とはいえ、出まかせの嘘を吐いた事を申し訳なさそうにする。



「……知っている」


しかし平然として答える王子に、執事は驚いて一瞬固まった。



「………。へ!?」



「しかし
敬語を使うなと命令されていたのは
知らなかったな。

そうか…
だからお前、俺に対してあれなのか」


何があれなのかは知らないが、執事は驚きを隠せなかった。



「じゃ、じゃあ王子…何で俺を…?」


何故此処に残る事を許してくれたのか、それが執事にとって一番の疑問だった。

その質問に王子は、少し間を置いてから口を開く。



「……お前が言ったんだろうが。
此処でお前が、俺に…」