朝早くから、森に住んでいる娘は家の花壇に水遣りをしていた。
洗濯物を干し終えた後なのだろう。物干し竿に衣服が気持ち良さそうに風に靡いている。
……そこへ、一人の男が木陰から娘のもとへと現れた。
「誰…?」
足音に気づき、娘は振り返る。
「やぁ…。」
男は珍しく、目立つライトグリーンの髪色をしていた。
「僕の名は、ロゼオ…」
物珍しそうに見つめている娘の目の前まで近づき、娘の顔を覗き込むようにして言った。
「ロゼオ=ダ・カーポ…。
以後、お見知り置きを…」
その漆黒の瞳が娘の瞳を捉えて離さない。
「君に用があってねー…
悪いんだけど、一緒に来てもらいたいんだ」
その妖しさを纏う独特の雰囲気に、娘は何故かいい気はしなかった。
「……何処に…?」
ロゼオのそれは、表面だけの嘘の様な笑顔のような気がした。
「……宮殿だよ」
それを聞いた瞬間、娘は息を呑んだ。
「君…舞踏会にもいたよね?
王子と仲が良いのかな…?」
娘は断らなければ…と無意識に体が反応する。
「貴方…誰なの…?」