━━━その時、不意に窓辺から、声が聞こえた。
「━━━希望なら、あるぞ…」
その聞き慣れた低い声で、執事や姐御、兵士やメイド達はゆっくり振り返る。
皆がずっと帰りを待っていた。
「王子…」
執事は一瞬目を疑った。
行方をくらましていた王子が今、ラウンジの窓辺に、いつものように腕を組んで腰掛けていたのだから。
「……希望なら、まだある」
その言葉は今の執事達にとって、とても力強く心に響く。
「王子…?本当に、王子だよな…?」
まだ信じられない執事は、遠慮がちに問い掛ける。
そのらしくない行動に王子は、いつものように薄く微笑んで言う。
「執事よ…、この国の王の後継者は誰だ?」
その自信に満ちた王子の言葉に、執事は安心したように笑った。メイド達の中には涙ぐむ者もいる。
「王子、戻ってきてくれたのか…。」
勿論姐御も、例外ではない。
皆、心から王子の帰りを待っていたのだ。