━━━気づけば街は夜になっていた。

帰り道の途中、娘は森の中を歩いていた。



(……お金持ちって、楽だと思ってたけど…
思ってた以上に大変だったんだね…。)


宮殿で姐御が言っていた事をぼんやり思い出す。



(孤独、か…)


それは、宮殿に住まう王子には到底結び付かない言葉だと思っていた。

しかし姐御から今までの王子の心境を聞き、理解する。



(今まで王子は…、
どんな思いで生きてきたのかな…。)



……そんな事を考えていると、森の辺りの様子に気がつく。



「あれ…?道、間違えちゃった…」


考え事をしていたせいで、家から少し逸れた湖に来てしまったのだ。


「こんな所があったんだ…初めて知った…」


どうやら森の奥に湖があった事は知らなかったようだ。


……しかしとても美しい湖だった。

夜の満月をバックに、ライトブルーの湖面に沢山の星が映るそれは、神秘的な光景だった。



「うわぁ…」


湖面に反射した月が泳ぐ様を見て、娘は思わず呟く。



「綺麗…」


娘はそれに目を奪われ、青白く輝く神秘に包まれている湖の畔に、ゆっくり腰を下ろす。