「済まないね。宮殿の奴等も色々あって
ちょっとピリピリしてるんだ…」
勿論皆がピリピリしている理由は、娘も分かっていた。
「気にしないで…。あの、姐御さん…」
娘が言うのを躊躇っている様子を見て、姐御は察する。
「……香澄も聞いたのか、国王陛下の事…」
「はい…。」
頷いて返事をすると、姐御は溜め息をついて苦笑した。
「折角王子を
尋ねてきてくれたのは悪いんだけどな…、
王子は今いないんだ。
あの駄目執事が
取り逃がしたらしくてね…。」
「そう、なんだ…」
先程兵士も言っていた通り、やはり宮殿には王子はいないらしい。
「すまないね。
心配して駆け付けて来てくれたのに…」
「いえ、あの、本当言うと…
買い物の帰りだったから、何となくで…」
買い物帰りのついでに寄った事を話すと、姐御は大笑いし始めた。
「あっははは!!そうかいそうかいっ、
まさか買い物のついでにとはね…
やっぱり香澄は面白いよ!!」
褒められてはいるようだが、何だか恥ずかしくなってしまう。
「いや本当、香澄くらいだよ。そんな事言うのは…。」