それを聞いて兵士は僅かに警戒を解く。
「王子は今、外出中だ」
想定していなかった訳ではないが、娘は言葉を詰まらせた。
「え…あの、じゃあ何処に…」
少なからず宮殿にいるものだと考えていた。
「それは街の者と言え教える事は出来ない」
所詮、部外者である娘を立ち入れる訳にはいかないのだろう。
「さぁ、用が済んだのならさっさと帰…」
兵士が娘を追い返そうとした時、後ろから聞き覚えのある声が聞こえた。
「その子に用があるのは私だよ」
目を向けるとそこには、舞踏会で知り合った宮殿に仕える使用人頭の姐御がいたのだ。
「姐御さん…!!」
「やぁ。よく来たね」
どうやら舞踏会で会った事を覚えていたらしく、温かく迎えてくれた。
「元気だったかい?舞踏会で以来だね…
お前は持ち場に戻りな」
「…は、」
姐御が命じると兵士は忠実に従い、自分の持ち場へと戻っていた。