「王子っ…!!!!」
既に宮殿の外に出ようとしていた王子の肩を後ろから掴む。
「待てよっ…」
「……何だ」
漸く振り返った王子は、いつもと何ら変わりなかった。
「何だ…ってそりゃ…
だから宮殿からは出ちゃいけねーんだよっ
お前は狙われてんだから…」
それ以前に、自棄に平然としすぎているその様子が気にかかった。
「……王子…悲しくねーのか…?
父親死んで、悲しくねーのかよ…?」
こんな事を聞くのは間違ってると思いながらも、口が勝手に動いてしまった。
しかし王子はいつもの声のトーンで言った。
「……お前は悲しいのか」
「へ…?」
反対に質問で返され、執事は戸惑ってしまう。
「俺はろくに、父の顔を見た事はない…。
息子の誕生日には無意味でしかない
舞踏会を主催し、その癖顔は出さない。
戻ってくるのは何年かに一度…
そんな奴を、お前は…父親と呼べるか…?」
執事は驚くしかなかった。
王子が此処まで考えていたなんて思いもしなかったのだ。