街の南側にそびえ立つ豪勢な宮殿。
その最上階に位置する寝室の中にいる人物が窓辺から街を眺めていると、コンコンッ…と扉をノックする音が部屋中に響く。
「━━━入れ…」
部屋の主から了承をもらうと、ゆっくりと扉が開く。
入ってきたのは、全身黒に身を包んだ若い男だった。
「あれっ?ご機嫌斜めかよ?」
これと言った特徴がない男は意外におちゃらけた口調だった。
「……黙れ」
声色からして部屋の主である人物は不機嫌だとその男は察する。
「うっわ酷ー!!何だよ折角の誕生日だろ?
何だその仏頂面…イケてる顔が台なしだぜ。
もっと笑ーえーよー」
「っ…。
煩いな…お前こそ、いつまでタメ口なんだ。
執事の癖して」
今、部屋の主は部屋に入って来た若い男を執事と言った。
……そう、全身黒に身を包んだその男はこの宮殿の執事だったのだ。