砂漠の国の夜は少しだけ寒い。
しかし宮殿の最上部からは、星空がよく見える。
━━━その星空を、見張り台となっている塔の上に座って娘は眺めながら待っていると、何の前触れもなく王子がひょっこりと目の前から顔が出した。
「…!!貴方だったのか…」
まさか娘が来ているとは思わなかったのだろう、王子は少し驚いた様子だ。
「あ、あはは…身軽って、便利だね…。」
しかし今のは王子の登場の仕方で娘の方が驚いていたが。
己の身軽さを活かして通路側の窓辺から飛び上がってきたのだろう。
「すまないな…。
家に行こうとは思っていたんだが…
傷が完治してなくて
姐御が外出許可をくれなかったんだ…」
そう言って、娘の隣に腰を下ろす。
「仕方ないよ…。
私の方こそ、ごめんなさいね…
挨拶しに来るの、少し遅くなっちゃって…」
「いや、いいんだ…あ、隣の国の事だがな、
ちゃんと食物は援助してるから、
心配しなくていいぞ」
「そっか…。」
そこで会話が途切れる。
今回の一件のせいで、お互いが何処となくぎこちない。