「……そんな事言うな…」


消え入りそうな声で言う娘に、王子は呟くように言った。



「そんな悲しい事、言うな…」


気づけば王子は、娘よりも悲しそうな顔をしていた。



「貴方が俺に言ったんだぞ…?
貴方は貴方のままでいい、と…

だから、俺は此処にいるんだ…」


そう言って、娘が握っている剣の刃先をグッ…と掴んで抑える。



「落ち着け…、」


王子の手から流れる血が刃先を伝う。



「怒っていいんだ…。
自分の親が殺されたと知ったら怒るのは、
当たり前の感情だ。

だったら…、
貴方も貴方のままでいいんじゃないか…?」


そう言って、目に涙を溜める娘に優しく微笑む。



「……どんなに
心が苦しみや憎しみで埋め尽くされても、
いつか…、
それを受け止められるようになるから…

だって俺がそうだからな…。」



「……王子…」



「それでもまだ…
まだ受け止められない部分があるなら、
俺もそれを一緒に背負ってやる…。」


まだこんな自分に笑いかけてくれた王子に、娘の頬に一筋の涙が伝う。