“ピンポン。…まもなく札幌行きが到着致します…。白線の内側までお下がり下さい”
声が響くスピーカーを睨み付けた日夏は。
「地下鉄なんて初めてだ!」
「わたし汽車も乗ったことない…」
「オレもない…」
ヒュンヒュン言う地下鉄の中は、その車体がぐにゃぐにゃくねり蛇みたいになる。
“まもなく札幌…。降り口は右側です”
シュー…。
扉の先にはたくさんの数の人の列。
ホームに押されながら足を付けた。
そして、またたくさんの人を乗せ走り出した長方形の箱を、呆然と見つめる。
「ここってもしかして…!?」
「JRタワーかっ…!!」
テレビでキャスターの“ナカさん”がよく口にする札幌駅前。JRタワー。
テレビで見慣れているナカさんが、とてつもない有名人な気がしてきた。
この大きな建物で買い物しよー!
張り切る葵ねぇの後を、見失わない様ただ着いて行くしかできなかった。