窓を全開にして。
「じゃ~な~っ!耕にぃ~っ!!しっかり働けよ~!」
と、日夏は身を乗り出し、窓の外から手を振った。
葵ねぇは、見送る耕にぃに片手を挙げただけで。
「しゅっぱーつ!」
アクセルを吹かし、車を走らせた。
わたしと日夏は、見えなくなる耕にぃに後ろから腕をブンブン横に振る。
腕を振り返す姿が段々と小さくなり、坂を下る頃、耕にぃは見えなくなった。
「葵ねぇ!安全運転だぜい!」
「お客様、かしこまりました!」
葵ねぇは、笑って答える。
わたしも日夏も初めての札幌に心躍らせ、流れて行く景色を黙って眺めていた。
『やま~をこーえいこ~よー…』
どんどんと小さくなる自分たちがいた町を背に、わたしと日夏は歌いながら。
葵ねぇは寝てもいいから。って、言うけど。
長い札幌までの道のりを、期待に胸をワクワクさせた。