「明日、日夏ママ帰ってくるね!」


「うるせ~から帰って来なくてもいいのにな~っ」


「そんなこと言わないのー!」


「それより札幌だぜ~!葵ねぇも粋な計らいしてくれんじゃね~かっ」

今度は時代劇にでもはまっているのか、日夏の口調はいつだってテレビの影響を受けている。わたしはそれをおかしそうに笑うと、また日夏は調子に乗る。

そんなことを繰り返し、わたしたちは手を繋ぎながら、また干場へと戻ってきた。



網篭の中の昆布が乾き始めていた。


焦ったわたしたちは、何もなかったかのように…。猛スピードで玉砂利の上に並べ始めた。



玉砂利の上に座り込んだわたしたちは、昆布を干すだけの作業に若干飽きてきた頃。



昼前になり、早めに帰って来てくれた日夏パパ。


日夏が一生懸命頼んでくれて、昆布小屋ではなく、『今日は特別だ!』と、わたしたちは船の上でお弁当を広げたんだ。


やったー!船の上でお弁当だー!


潮の香りを漂わせる中で、嬉しさという感情に浸っていたのに…。


「弁当~!」

待ってました!と、自分のお弁当よりも日夏は、わたしのお弁当を開けた…。