麦藁帽子を脱いで、日夏に貰った貝殻ピンバッチをリボンの紐に付けた。
観念したかのように、チラッとわたしの方を見た日夏の目線は、全く合っていなかった。
わたしはおもしろがって、日夏を追いかけ回した。
「危ないつ~の!」
「待て~!」
玉砂利の上をぴょんぴょん逃げ回る日夏を追いかけ回す。
気づけば砂浜まで走って来ていて。
走りにくい砂の中にわたしは足を取られ、つまずきそうになって手をついた。
「ほら!危ないつ~の!」
顔を上に向けると、右手を差し出して、わたしを起き上がらせる。
わたしの腕にこびりついた砂を払い落としながら。
「…もう走んな!」
と、目を合わすことなく言った。
大人になんなくてもいいから。
この仲良く並んだラインストーンみたいに。
いつまでも、ずっとこんな時間が続けばいいなー。
心底思ったんだよ…。