「やだ!ツバ飛んで来たー!!汚ーいっ!」

無造作に首に巻き付けられたタオルで、これでもかと言わんばかりに目の周りをしつこいくらい擦り合わせた。


「そ、そんなお前!鳥の糞かかったみたいに大袈裟だなっ!オレの唾だろ~がよっ、有り難く受け取れっ!ペッペッ!!」

口にわざと含ませた唾液をわたしに向かって吐きかけた。


…ムカーっ!


海面に両手を入れ、水をすくって日夏の顔面に向かってぶつけた。

「…うぉっ!染みるっ!!よくもやったな!」

痛そうに目をすぼめたかと思ったら、日夏は反撃開始する。



わたしと日夏はすぐに全身ずぶ濡れになった。



「…着替え持って来てないのにー!」


「心音が悪いんじゃんよ~!ほっとけばすぐ乾くべ~。お前のせいでパンツまでビショビショだぜい…」


「塩でベトベトするっー」

わたしも日夏も、Tシャツの裾を軽く絞る。



全身海の匂いに纏われたわたしたちは、それでも、目を合わせ笑い転げた。