病院を出る時、自動ドアに挟まれそうになると咲之助が無言で手を引いてくれた。



自動ドアごときが未だに一人で通り抜けられない、こんなあたしのそばにいてくれることになんだかとっても感謝の気持ちが生まれてきた。



ドアを過ぎると手は離され、かたくて冷たい感触が余韻のように手のひらに残った。



もう一度その手に触れたくて、歩くふりをして何気なく軽く手をぶつけてみる。


そうしたら咲之助の手がひたひたとくっついて来た。



駐車場を通り過ぎる頃には、指と指を絡ませて、咲之助の手にしっかりと包まれているあたしの手。




「サクの手、冷たいね」



「心はあったかい。」



「知ってる。」




ふと、視界に白いものがちらほらと舞った。

空を見上げると、小さな雪たちが舞い降りてきていた。




「雪…」



そう囁いた声が聞こえたのか聞こえなかったのか分からないが、咲之助も空を仰いでいた。



一粒の雪の行方を何気なく追っていると、繋いでいる方の咲之助の手の上に落ちた。
そしてそれは瞬く間に溶けて、透明な水に変わった。