観月の病室を後にして廊下に出ても、咲之助の眉間から力が抜けることはなかった。
「機嫌悪い?」
咲之助の顔色を伺いながら、そう小さく言うと。
「別に。」
と、無意識に口癖を言ってる時点で余裕のなさが目に見えた。
これもうふて腐れているな。
「地味なカメラマンさんは観月の大切な人で、その人に伝言頼まれただけだよ」
「抱きつけって?」
「それは違う。」
「へえ」
「海外では抱きつくのなんて挨拶だよ。」
「ここは日本だ。」
「…バカサク」
もうそろそろこの頑固者に説明するのもめんどくさくなって、取りあえずそれだけ言ってあたし的には会話終了。
咲之助的にも会話は終わったようで、二人とも何も喋らなくなった。