「そう言われたら俺は…」
もう二度と会いたくない。
そんなことあって欲しくないけど、これからまだまだ長いから。
あたしだったら言いかねないなと思った。
その時咲之助はどんな顔をするのだろう。
「俺は、たぶん何度も会いに行くと思う。」
咲之助がそう答えると、観月は「ふーん」とだけ言った。
「嫌われてんだよ? そんなことしたらもっと嫌われるよ、きっと。」
「いいよ。嫌われるほど一方的にでも愛したいんだ。」
「ふふ。歪んでるね、咲之助くんは。」
「おう」
「うんうん。それでいいと思う。 幸せになることに貪欲でないと、蕾はそばにおいてくれないからね。」
「あ、それ俺も思った。」
「はは」と二人の短い笑い声が聞こえた。
「咲之助くん、俺、幸せの求め方勉強してからまた出直すから、それまで蕾のことよろしくね」
「言われなくても」
「そっか。」
「うん。」
「あ、それからもう一つ言っておきたいことがあるんだった」
「何?」
「蕾のこと大事に思ってる人間がお前以外にもいるってこと忘れるなよ。
みんなの大事なものを、お前はこれから人生をかけて守ってくんだから。」
「つくづく思うんだけど、お前かっこいいことばっか言うよな。」
「それはどーも」
会話を聞いていたら涙が出てきて、ドアの隙間から見える病院がぼやけた。