病室の前に着いて、ドアを開けようとすると中から観月と咲之助の会話が聞こえてきた。




「蕾のこと、支えられるわけ?」



「たぶん。 蕾がそばにいてくれる限り、守ってやりたいと思うよ」



「そう。でも俺も蕾のこと好きだから、簡単には譲れない」



「でも、蕾は俺のことが好きなんだろ」



「…」



「なんか言えよ。俺すごくイタイやつじゃん」



「ごめん。真剣な顔で言うからびっくりした。」




「あ、そう」






それからまた沈黙。
なんだか入るタイミングが分からない。

二人がどんな顔してるのか気になって、ドアの隙間から覗き見てみる。




咲之助は背中しか見えないし。観月も、咲之助に隠れてまったく顔が見えなかった。




「ねえ」



観月の声がして、気付かれたかと一瞬びくっと体が反応した。




「もしさあ、蕾に」




普通に話している観月の様子からすると、どうやらあたしに対してではないようで、強ばった頬から力が抜けた。




「もし、蕾に嫌われたとして、もう二度と会いたくないって言われたら、咲之助くんはどうする?」




ほっとしたのもつかの間、そんな観月の質問にまた心臓がどきんと跳ねた。