写真を手渡すと、地味なカメラマンはそのシワを伸ばしているあたしの横を通り過ぎて行った。




「あ、観月に会っていかな…」



観月に会っていかないの?


そう聞こうと振り返ったが、地味なカメラマンの姿はもうなかった。

たぶん角を曲がってしまって見えなくなっただけだろうと、特に気にしなかった。




ふと、そろそろ病室に戻らないと咲之助が心配するだろうと思い、元来た道を戻ろうと方向転換した。



けど、何気なく歩いて来てしまったので帰り方が分からなかった。

仕方なく、再び手すりに掴まってそれに沿って帰ることにした。




歩いてる最中、もう一度渡された写真を見てみる。


そこに映っているのは少し幼いけど間違いなく観月だ。
水しぶきがぽつぽつと舞っていて、水に浸かって金髪を頬に張り付けてる観月がこっちを睨んでいた。




地味なカメラマンがなんでこの写真を渡してほしいのか分からないが、これが大切なものだってことは伝わってきた。


このしわくちゃさは、誤って洗濯してしまったのではなくて、肌身離さず持ち歩いてたからなんだろうと、なんとなくそう感じた。