地味なカメラマンまでは少し距離があって、その紙を受け取るには少し歩かないといけない。
まるで「取りに来い」と言われているようであんまり気分はよくない。
が、受け取らないと観月に申し訳ない気がしたから、手すりから離れて地味なカメラマンに近寄って行った。
「蕾ちゃん、観月が言ってたんだけどさ」
お腹がまた痛み出して、地味なカメラマンが何か喋ってる気がしたけど耳に入ってこない。
紙に手を伸ばすと、なぜか手首をひっつかまれた。
「観月が、」
気づいた時には地味なカメラマンの腕の中にいた。
「観月がね、蕾ちゃんを抱きしめると落ち着くって。」
「あたし彼氏います。」
「サクタロウくんだっけ?」
「咲之助です。」
観月と同じく、咲之助の名前を間違えた地味なカメラマンに、ちょっとむっとした。
そんなに観月観月言ってるなら会えばいいのにって。
地味なカメラマンから解放されると、本来の目的だったくしゃくしゃの紙をようやく受け取れた。
手にするまではもっと薄っぺらの紙だと思っていたけど案外固くて、写真であることが分かった。