くたびれたワイシャツの上に年季の入ったカメラがぶらんとぶら下がっていて、まさかと思った。
「…地味なカメラマン」
男の独特な雰囲気は、観月が話してくれた人物像とぴったりと重なった。
そう呟いたままあたしが硬直してると、地味なカメラマンはふいにあたしにカメラを向け、許可もなくシャッターを切った。
「いいね、今の顔」
歯を見せて笑ってそう言った瞬間、前髪が微かに動き、隠れていた目があらわになった。
思わずその瞳の奥の奥まで見るようにまじまじと観察しまう。
普通の人ならただ目が合ってるだけに思うかもしれないが、地味なカメラマンは気づいたようだ。
「蕾ちゃんはやっぱり不思議な子だね」
「カメラマンさんも人のこと言えないです。」
ニコニコ笑うその人に対して、あたしはまだ警戒をとけないでいる。
ふと、地味なカメラマンがここにいる理由が気になった。
「…観月に会いに?」
観月の大切な人なんだとしたら、この人にとっても観月が大切な存在なんだろう。
勝手に解釈しつつ、あたかもこの場にいる理由はそれしかないみたいに訊ねてみた。