病室を出て廊下をふらふら歩いていると気が紛れて痛みが引いていく気がした。



それにしても、さっきの観月と咲之助のやり取りはなんだか本気で親に結婚の許しを得に来たようで、思い出すと笑える。



そういえば、マユナのところに行った時も今と似たような気持ちになった。
咲之助はどうだか分からないけど。

あたしは親に付き合いを認めてもらいに行くような気分だったと思う。





こんなにいろんな人に付き合うことを報告しに行くなんて、なんだか不思議な気持ちになる。



結婚なんて言ったら、もっとたいへんなんだろうなあ。





手すりに手を滑らせて歩いていると、中庭の見える大きなガラス窓の前に着ていた。



そこからおもむろに空を見上げると、今にも雪が降ってきそうな灰色の空が見えた。




きっと外は寒いのだろう。
そう思うと体が勝手に震えた。





「あれ? 蕾ちゃん?」




空から視線を下げて声の方へ顔を向けると、ボサボサの髪の毛に目を隠したいかにも怪しそうな細い男が立っていた。