「蕾っ どうしたんだっ」
様子がおかしい蕾にどう触れたらいいのか分からず、声しかかけられない。
「サ、ク…」
力なく口を動かす蕾。
膝を地べたについて、腹部を押さえている。
「どうしたのっ」
佐伯が後から駆け寄って来て、俺の隣にしゃがみこんだ。
「取りあえずあたしんち入ろう」
蕾の様子を見て、どうすることもできない俺とは違い、佐伯は冷静にそう言った。
「立てる?」
佐伯は蕾の肩を支えて、手を差しのべる。
蕾は顔を伏せたまま頷いて、佐伯のその手に捕まった。
蕾がゆっくり立ち上がると、地面に赤い点が二つほどポツポツとあった。
そこから視線を上げていくと、蕾の足の内側に赤い何かが伝っていた。
「あ」
佐伯はそれに気づくと、俺の視線から蕾を守るように立ちはだかった。
「え?」
何が何だか分からない俺は、しゃがみこんだまま佐伯の顔をまじまじと見上げる。
「女はたいへんなのっ 男と違っていろいろあんのっ」
佐伯はそれだけ言って、蕾を支えるようにして家に入って行ってしまった。