俺の長い台詞の後に、佐伯は顔を上げた。
「…バカ、本気で好きになっちゃうじゃん」
そしてそう言うと、またすぐにうつ向いて一回だけ鼻をすすった。
「咲之助、あんたを自由にしてあげるよ。」
少し前よりボリュームアップしたまつ毛で瞬きをする佐伯。目には今にもこぼれそうなほど涙が浮かんでいた。
「あたし、本当は、妊娠してない」
言ったのと同時に佐伯の目から涙がこぼれた。
それをまじまじと見つめていると、佐伯はふいに空を見上げた。
「好きな男以外の前で泣き顔は晒さない主義なんでね。」
佐伯はそう言ったけど、佐伯より背の高い俺には逆に泣き顔がよく見えてしまう。
それを見ないように今度は俺がうつ向いた。