「でも、マユナはサクを傷つけるためにそんな嘘ついたんじゃないよ」




背中にあたたかな体温を貼り付かせながら、蕾は俺の様子を伺っているようだった。




「マユナはサクが大好きで、ずっとそばにいて欲しかっただけなんだよ。」



「…」



「簡単に許せることじゃないけど、マユナのこと怒鳴ったりしないでほしい」



「…」



「…怒ってる?」



「別に。」



「それじゃ分からないよ」



「怒ってなくはない」



「ごめん」



「なんで?」



「べつに。」





会話はそこで途切れて、お互いどんなふうに感じてどんな顔をしているのか分からなかったけど。

たぶん二人ともちょっとだけ笑っていたと思う。




俺は「べつに。」っていう、自分の口癖を真似されたのがなんとなく可笑しかったから。


蕾は…、たぶん笑っていたとしたら同じような理由で笑っていたんだろうな。