翌朝。
目覚ましの鳴る音で目が覚めた。
暖房器具は一斎切って寝るから、早朝の部屋の中は冷えきっている。
いつもと変わらない天井が目に入る。
起き上がって窓の前まで行くと、冬の柔らかな光の中に蕾の部屋の窓が見えた。
カーテンで部屋の中までは見えないものの、なんだか口元が緩んでだらしない顔になりそうになる。
そんなたるんだ頬をバシバシ両手で叩いて引き締めた。
あの後もう一度唇を重ねようと、蕾の頬に触れた時。
下から玄関の開く音がして、俺たちはあと1センチの距離のところで動きを止めた。
『あれ、蕾帰ってるの?』
そして聞こえたのは蕾のおばさんの声。
あの夏以来気まずくて合っていなかったおばさん。
蕾とはまた元通りになれたとしても、今この状況を見られたら不味い気がする。
慌てた俺たちは体を離して、俺は玄関に靴があることも忘れて蕾の部屋のベランダから自分の部屋へ飛び移ったのだった。