「だからあたし、サクがいないと強くなれない。そばにいてよ、好きなんだよ」



ドアノブがまたカタンと音を立てて下に下がる。
蕾がドアを開ける前に、俺は勢いよくドアノブを引く。


ノブを持っていた蕾はそれに引っ張られ、ドアが開くと一緒に外に飛び出してきた。


そんな蕾を受け止めて、強く抱き締める。





「俺も、蕾がいないと強くなれない。そばにいるよ、ずっと」




「大人になれなくても? あたし、赤ちゃんも生めない…っ」





胸に顔を埋めてる蕾の声が、直接心臓に響いてくる。


"赤ちゃんが生めない"

それを聞いて蕾が俺から離れて行った理由が分かった。




「大丈夫だよ。 蕾を置いて大人になんかならない。 蕾がいれば、それだけでいいから」






ずっとずっと胸の奥にあった言葉。
ようやく蕾に届けることができた。






「好きだよ」







長年温めてきた気持ちが声になって響いて。
今まで言えなかった、「ありがとう」だとか「寂しい」だとか、積もった感情が一つになってその一言だけで全てが伝わるように感じた。