月光が観月の頬を白く照らし出し、金色の髪は上品に輝いている。
「綺麗だね」
そう言おうとすると、窓からの冷たい風に唇が微かに震えた。
「蕾…」
観月はそんなあたしの唇に人差し指をくっつけて喋ろうとするのを遮った。
観月の熱が唇に感じる。
そして、すべらせるように指を離すと、観月は眉を寄せてとても切なそうな顔をして言った。
「…蕾、"劇中"なんだから俺のこと観月って呼んじゃダメじゃん。それから、いつになったらフミって名前で呼んでくれるの?」
あたしが間違えに気づいて「あ」と言う顔をすると、観月はやりきれない様子で深くため息をついて項垂れた。
それもそのはず。
この直前に観月にはかなり長い台詞を言うところがあって。
それがついさっきやっとうまく言えたところなのだ。
今あたしたちは文化祭の出し物の準備中で。
クラスの出し物に決まった映画上映のための撮影をしていた。
「観月、あ、フミ、ごめん」
とてつもなく切ない顔のままの観月に、相変わらずの平らな声で謝った。