窓から差し込む日の光りを背に、佐伯の顔は逆光により影になっていた。
肩を落としたその姿はとても寂しそうで、追い討ちをかけるような発言はこれ以上出来ない気がした。
けれど言わなければ。
佐伯のためにも。
俺自身のためにも。
今まで曖昧な関係に終止符を打てなかったのは、きっと佐伯を傷つけるのが怖かったのではなくて。
佐伯にひどいことをした罪悪感を背負いたくなかったからだ。
だけどそれはもっといけないことだと分かっていたはず。
ずるずると関係を続けるうちに、どんどん深みにはまっていって。
いつか本当に佐伯のことを好きになって、そうしたら蕾のことを忘れられる気がしていた。
それでもいいかな、なんて思ったこともあった。
けれどそれは自分の真理ではないから。
「ごめん。」
頭を垂れた佐伯の茶色の長い髪が肩からするりと落ち、さらさらと揺れる。
それを見下ろしながら言って、俺も頭を下げて謝った。