「―…い、おい。蕾」
…咲之助、君はなんで
なんで…
「は~や~く~ 起きろぉおぉおおっ」
なんで君は、こんなあたしに厳しいの?
布団をひっぺがされ、ベッドから冷たい床に落っこちる。
べたんっ
肘を打ち付けて、たまらないほどの痺れに襲われた。
「うう…」
「遅刻するっつのっ おばさんもう仕事行ったぞっ」
女の子がうずくまってうなってるってのに、咲之助は手も差しのべてこない。
今日は演技じゃなくてマジで痛いのに。
「い…いま何時…」
「8時15分っ あと20分で遅刻だっ」
「うう…」
「ほらっ 早くっ」
壁に掛けてあった制服をハンガーごと投げつけてきた。
それはいつものことだから、条件反射でよける。
「…サク、着替え手伝って」
「あのさ、いつも言ってんじゃん。 もうそういうことしない歳だから」
「まったく、大人ぶっちゃってさっ」
「るせっ 女と男なんだからしょーがねーのっ」
そう言った咲之助は、やっぱりあたしには大人ぶってるようにしか見えなかった。