握られた手をふいに引っ張られて、抱き締められた。
「観月、観月のこと好きだから、ちゃんとふるね。」
高校に入ってからあたしは背が伸びてしまったから、こいつとの身長差はあんまりない。
だから自然と口は耳元に近くなる。囁く声が直に耳に届いて、切なくなった。
「今までありがとう。観月のこと忘れないよ。 そして、これからはちゃんと、」
そこで体を離され、目と目を合わせて向き合うと。
「男の子として生きて行ってください。」
刹那、涙がぴたっと止まった。
「知ってた、の…?」
て聞くと、そいつは笑っただけ。
あたしの肩を持ってくるんと回転させると、
「ほら、早くあの子のとこに行ってあげないと」
と言って背中を押した。
押されるままに一歩進んで、待合室のドアに近づくと。
「アヤっ アヤどこ行ったのっ」
と、あたしを探してうろうろしてる蕾の姿が見えた。