「戦争やってる国に行かなきゃだから。連れて行けなくなったんだ。」
そう言われ。
突き刺すような悲しみに襲われるかと思ったら、安堵の気持ちのほうが大きくて。
どちらかと言えば自分のそう言う気持ちにショックを受けた。
「一緒に連れてってくれないなら、あんたが帰って来るまでずっと待ってるよ。」
自分の気持ち的にもついて行くことはたぶんもう叶わないから。
今無理なく自分に出来そうなことを口にした。
「待ってるから。」
でもそれは漠然としていて。
約束と言うにはあたりにも頼りなさすぎる。
それゆえに薄っぺらい言葉で、嘘っぽく聞こえた。
「待っててくれんの? ありがと。 でもいつ死ぬか分かんないから、」
そいつは微笑むと、あたしの手を支えにして立ち上がって。
「待ってなくていい」
ときっぱり言った。
瞬間、パリーンて、何かが割れる音がした。
ガラスが割れたとかそんなんじゃなくて、自分の中の何かが壊れた音。
「…そんなふうに、遠回しに言わないで、短刀直入に"別れよ"って言えばいいじゃん」
待ってなくていい。
それはきっとそういうこと。
こいつはここで終わりにする気なんだ。