海に沈んでいく真っ赤な太陽を見ながら、夕食を一階の広間で済ませた。


咲之助は水着のまま、潮でカピカピになった髪の毛をわずかに揺らしながら、一心不乱にご飯を口にかきいれていて。
一度もこっちを見なかった。





それからすぐに入浴の時間になって、後で入ると言う観月を部屋に残し、一人で風呂場へ向かった。



サンダルに履き替えて、地面に散らばる誰かが引き連れて来た浜の砂をジャリジャリ踏みながら歩く。




すると。
通り道にある男用の風呂のドアがカラカラと開いて。


出てきたのは咲之助だった。


肩にかけたバスタオルを口元を当てながら、あたしを見て一瞬驚いた顔をする。




何か言おうとあたしは口を開いたけど、咲之助はしれっとして横を通りすぎて行く。





「サ…」



ひき止めようと手を伸ばした。

けど、さっき離れることを覚悟して突き放したくせに、またひき止めるなんてあんまりな気がする。




咲之助は振り返る素振りすら見せず、黙ったまま中へ入って行ってしまった。





これでよかったんだと、胸の痛みを誤魔化すように自分を言い聞かせた。