膝の上に置いた両手をぎゅっと握りしめた時、いきなり観月が立ち上がった。
そしてあたしの手を引いた。
急に引っ張られて立ち上がる間もなく、四つん這いで観月について行く。
窓辺まで来ると、観月は大声を張り上げた。
「阿宮ーっ 咲之助くーんっ」
海に出かけて行った男子二人の名前を呼ぶと。
今まで何をしていたのか、ちょうど海に向かおうとしていた二人がこっちを振り返った。
あたしは、大きく手を振る観月の影から少しだけ顔を覗かせてそれを見てる。
「写真撮るから笑ってーっ」
カメラなんか持って来てないよ、という顔を観月に向けると。
観月は笑って、ポケットから使い捨てカメラを出した。
「撮るぞー」
いざカメラを向けると、ぼけっとしていた男子二人はニカッと笑顔を作って見せた。
半袖に下は水着を履いて、楽しそうに浮き輪を掲げてる咲之助。
あたしのことは…見ようとしない。
撮影が終わると、咲之助は阿宮とふざけ合いながら道路の向こうの海へと走っていった。