限界が来る?
あたしにもそんな日が来るのだろうか。
「一人で頑張れるって思えてても、ダメかな」
観月の横顔の輪郭をなぞりながら控えめに問う。
「絶対ダメってわけじゃないだろうけど…」
「けど?」
問い返すと、観月はラムネをぐいっと飲んでから。
「そんな寂しいこと言わないでよ」
って。
記憶の病気のことは一言も話してないのに、全部知ってるみたいに寂しく笑った。
「あったことを夜な夜な文にして書き残すことより、まずはメモリーカードになってくれる人を探すかな。」
「悪魔であたしならの話しだけどね」と付け加えて、残りわずかなラムネを観月は飲み干した。
「…メモリーカード」
そうカタカナにして見ると、お手頃なものに感じるけど。
実際メモリーカードに選ばれた人は、あたしが忘れる度に今までのことを話さなくちゃいけなくなる…
大切な人にはさせたくないな、と、思ってしまった。