「なんで?」
汗をかいているように水滴がたくさん浮かんでいるムネ。
手がびちゃびちゃになることは予想できたけど、そんな瓶を両手で包んで持った。
そしてぎゅっと力を入れて。
「なんでも」
と答える。
それに対して
「そう」
と、観月は言って、それきり喋らなくなった。
「…観月」
咲之助に続き、観月とまで気まずくなるのは嫌だったから、顔色を伺うように小さく呼んだ。
「ん?」
「何?」、と口の端を持ち上げて微笑みながら返事した観月。
その笑顔にあたしはほっと胸をなで下ろした。
「観月はさ、もしこれから先起こったことを記憶してられない体になったら、どうする?」
我ながら現実味のない話し。
すぐに答えは返って来ないだろうと思っていた。
「それはたぶん、覚えておこうって努力するね。」
返ってくる答えが予想できないうちに返事されて、逆にこっちがうろたえた。
「でもいつか疲れちゃうと思う。 自分だけじゃ限界になる日がくるよ。」
青い瓶に軽く唇を付けたまま、伏し目がちに観月は言った。