絶え間なく聞こえる波音。
咲之助にあんなことを言った後なのに、なぜか心はほっとしていて。
窓の縁に顎を乗せてだらけた大勢で、果てしない海と空をぼんやり眺めてる。
「ラムネ買って来たよー」
ゆっくりと首を回すと、水色の瓶を二本持った観月が立っていた。
「観月は海行かなくていいの?」
部屋にいると言ったあたしに気を遣っているのではと思い、さっきも同じことを聞いたがもう一度訊ねてみた。
「いいのいいの、今女の子の日だからさ」
小さい部屋に置くには大きいような長方形のテーブルに、ラムネを置きながら観月は笑った。
観月は最近は"アヤって呼べ"って言わなくなった。
あたしがいつまでも"観月"としか呼ばないから諦めたのかも。
「女の子の日かあ」
ぼやくと、観月は、それが何?と言うような顔をしたけど、詮索しようとはして来ない。
「ラムネ飲んでいい?」
窓辺から離れてテーブルに近寄った。
「あ、いいよっ 飲みなっ」
観月のいる空間は気分が落ち込んでる時には特に居心地よく感じる。
咲之助と過ごしてきた時間とはまた別の安ぎがあって。
変な緊張もないし、不安も感じないんだ。