指と指の間に、蕾の指が入り込んで来て。


俺は、獲物が完全に手の内に入るのを待っている獣のように。
蕾の手が自分の手の中に収まるまで握り返さないでいる。




少し怖かったんだ。
俺が触れたいと思う気持ちと、蕾が手を繋ぎたいと思う気持ちはたぶん違うものだから。




今朝まで見返りなんて求めずに世話をやいてきたのに。
いきなり下心を見せたら離れて行ってしまう気がする。






「サク」





でも。
そう名前を呼ばれた瞬間、頭で考えるより早く手を握り返していた。




蕾がこうして来た時、中2までは迷いもせず手を繋いだ。
中3になると少しうっとうしくなって、高校に入学するとその手を振り払っていた。