「なんであたしのだって分かったの」



余計なこととは受け取らなかったようで、蕾は俺の言ったことをさらっと流してそう聞いてきた。




「なんでって、こんなちっこい靴履いてんのお前しかいないだろ」




部活に行くとき、あそこで靴を落とさなければ気付かなかったかもしれないが。
なんとなく、最もそうなそんな答えを返した。




「それに」



俺とやりたかったかは分からないが、たぶん…。


言うか言うまいか戸惑ったが、喋りかけたことは最後まで言わないと蕾はいつもあからさまに不服そうな顔をするから。





「…やりたかったんだろ。シンデレラごっこ。」




そう言うと、思い出したように目を真ん丸にする蕾。


どうやらシンデレラごっこにこだわっていたのは俺のほうだったみたいだ。

あの時、階段で上履きくらい拾ってやれなかったことを、実はずっと気にしてた。