あ。そういえば。
と、頼りなくなった手の力を誤魔化すように、蕾の足元に視線をやる。




「お前、片方靴履いてねーだろ」



言うと、「あ」と声を漏らして蕾も自分の足元を見た。




シンデレラごっこの延長なんだろうか。
片方の靴でここまで歩いてくるとは、なかなか手の込んだことをする。
相当シンデレラになりたかったんだろうな。


ま、蕾がシンデレラって言うのはいいかもしれないが。
俺はどう見たって王子って柄じゃない。左肩外れてるかもしれないし、制服汚いし。




「ったく、なにやってんだよ」



って言ってみたものの、俺が拾って来てよかったのかと今さらながら心配になる。


がっかりしたらごめんと思いながら、スポーツバッグからタオルでぐるぐる巻きにした靴を取り出す。


くるくると、早退したために使うことのなかったタオルをほどいた。
そして屈んで蕾の足元に置いた。





「お前が帰って来ないっておばさんから電話があって、また学校まで行ったんだからな」




蕾は、雨にも濡れてないし、無事だったからよかったんだけど、つい余計なことまで喋ってしまう。