だが、それも長くは続かなかった。



彼らが付き合い始めて約一年後、葉月さんは妊娠した。



狂喜してその事を一番にオレに報告してくれた兄貴の姿が、心変わりのきっかけになったのだと思う。


ガキなりに『兄ちゃんが幸せならオレも幸せだ』と、そう思える自分に出会えた。


オレはその日を境に葉月さんを見る目を変え、素直に接するようになった。


子供というのは単純なもんで、そうしたとたん、オレは彼女がとても美人で優しい女性である事に気づいた。


『敵』としか認識していなかった葉月さんの好意など受ける気なんかこれっぽっちもなかったものだから、改めて心の暖かさに触れて驚き、そして反省した覚えがある。