親父からの送金分と併せて、実は毎月かなりの額を預金している。
18になったら免許を取って、車を新車で購入する夢を叶えるためだ。


車何にしようかなぁ。
兄貴のエクスプローラーもかっこいいけど、やっぱり最初は日本車かな。
助手席にカノジョ乗っけて海までドライブ、とか楽しいだろうなあ。

もちろんイイ女限定で。
顔がいいのは当然として、小さくて細くてでもエロい身体してて明るくて優しくて、間違っても『マジありえなくね?』とか『うぜー』なんて汚い言葉を吐かない、そう、たとえばコウコみたいな・・・。


ーーーんん?

なんで今コウコが出てきた?

ここはグラビアアイドルとか、モデルとかがオレの隣で微笑んでいる妄想に浸るべきであって。

ただのクラスメイト、よりもちょびっとだけ親しい女友達の出る幕ではないはずなのに。

思惑とは裏腹に、想像の中ですら眩しく感じる笑顔のコウコが、消しても消しても浮かび上がって来る。


・・・なんだ?これは。



「それより、愁路」

兄貴の声で、我に返る。

「10時には出るから。戸締りと火の元の確認、頼むな」
「・・・あ、ああ。そっか・・・今日か・・・」

浮かれすぎて、忘れるところだった。

急に感傷的な気分になる。


「・・・明日で、7年・・・経つんだな」
「うん」

と兄貴は薄く微笑む。

「オレも行こうか?学校なんか休むよ」
「それはお前の保護者として許可できない。でも・・・ありがとう。気持ちだけで充分だよ。・・・葉月にも伝えておく」


時間になり、兄貴は再度オレに戸締りとガス詮の事を言い聞かせ、車のキーを持って出かけて行った。



オレは時計の針が午前0時を示すと同時に、黙祷を捧げた。



——7年前の、今日。


兄貴は妻の葉月さんを亡くした。