そんなオレの願いは半分だけ叶えられた。


啜り泣きが響く中、葉月さんの遺体が荼毘に付されようとしていた時、止めろ、という絶叫と共に兄貴が会場に姿を現した。


『葉月に触るな』



『葉月を返してくれ』



『葉月は誰にも渡さない』



誰の目から見ても彼の精神状態が異常なのは明らかだった。


火葬場職員に掴み掛かろうとした兄貴は集まった親戚男性一同によって取り押さえられ、再び意識を失くした。





妻を失った日から破滅に向かっていた兄貴の精神は、その後一年ほど回復されないまま、冷たい海の底のような暗い闇をさまよい続けることになる。



オレと親父の強い想いが、傷つき、凍結した兄貴の心に届き始めたと分かった時は、嬉しくて嬉しくて、兄貴にしがみついて泣きじゃくった。





ようやく普通に生活できるようになって休学していた大学に通い始めた頃、親父は今までオレにも伏せていた『真実』を語った。